弟は、母にだけさう云つたのだし、母も亦弟が死んでしまつてからさう云つたと語つてきかせた。
聞いた時には一寸、何故生きてゐるうちに話して呉れなかつたのかと、怨めしい気持がしたが、俯いてゐる母をジツと見てゐると、生きてゐるうちには語りたくなかつたのだと分つた。
死ぬが死ぬまで、大概の人間が、死ぬのだとは信じ切れないのでこそ、人は生きてゆく所以でもあるのだが、母も亦私も、祖母も亦他の弟達も、死ぬが死ぬまで、死ぬだらうと思ひながらも死ぬのだとは思つてゐなかつたので、いよいよ死んでしまつた時には、悲しみよりもまづ、ホーラ、ホラ/\と、ギヨツとして顔を見合せるといつた気持が湧起つたのだつた。