医者が来ると、母を出して、私は弟の部屋から引込むのであつたが、或る日私は、自分の耳の下の二分ばかり小高くなつた脬腫を診察して貰はうと思つたので、弟の寝てゐる部屋に出て行つた。
弟は、私が現れると、私を見て、それから医者の顔を見た。
私の下手な挨拶、それでも父のゐない家では、私が戸主なのだから、それに偶にしか帰つて来ない田舎のことだし、私自身は不評判な息子なのだからと思ふと、せいぜい世俗的な丁寧さをもつてくる私の挨拶を見て、弟はあてが外れたといふ顔をしてゐたし、私自身も一寸恥しくなつた。
医者が来ると、母を出して、私は弟の部屋から引込むのであつたが、或る日私は、自分の耳の下の二分ばかり小高くなつた脬腫を診察して貰はうと思つたので、弟の寝てゐる部屋に出て行つた。
弟は、私が現れると、私を見て、それから医者の顔を見た。
私の下手な挨拶、それでも父のゐない家では、私が戸主なのだから、それに偶にしか帰つて来ない田舎のことだし、私自身は不評判な息子なのだからと思ふと、せいぜい世俗的な丁寧さをもつてくる私の挨拶を見て、弟はあてが外れたといふ顔をしてゐたし、私自身も一寸恥しくなつた。