私は何か、心残りであつた。
死を観念させられてゐる弟の前で、一寸した脬腫のことなぞ持出したことはと、そんな気持もするのであつた。
医者が帰つた後で、うつかりまた耳の下へ手をやつてゐるのを、弟の眼がマジマジとするので気が付いて、急に手を下ろすと、一瞬弟の眼は後悔の色を浮かべるのであつた。
私は何か、心残りであつた。
死を観念させられてゐる弟の前で、一寸した脬腫のことなぞ持出したことはと、そんな気持もするのであつた。
医者が帰つた後で、うつかりまた耳の下へ手をやつてゐるのを、弟の眼がマジマジとするので気が付いて、急に手を下ろすと、一瞬弟の眼は後悔の色を浮かべるのであつた。