私にしてからが数日来の色々のお勤めが、やつと茲で終りを告げるのであつてみれば、此の町に、今は自分の友人とてもない身の、フラフラツと、久しぶりにゆつくり話さうといふ気にもなつたし又、先に此の医者が死んだ弟にあなたは死ぬんだなぞといつた時、ビツクリさせられた印象が、何か此の田舎医者の中に追求してみたいといふ気持を、漠然と抱かせてゐたので、瞬時躊躇はしたものの、よし、では上つてやらうといふ気を起したのであつた。
『では』と云つて、私が背ろの硝子戸を締めると、医者の奥さんは、ニッコリとした。
『獲物がかゝつた……』云つてみればさうなのである。