奥さんは、もう出ては来ず、奥の方で琵琶を掻きならし、その子供のない太つちよの、快活無比の奥さんが鳴らす琵琶の音は少々ぞんざいで、嘲弄されてゐるやうな気持もされるのであつた。
が、こんな気持を咬殺すことにも、私は今云つたやうに可なり男性的である。
而も猶、一寸立つて便所に行かうとすると、途中で曲つてゐる梯子段を踏み過つて、私は四五段も辷り落ち、肘をしたたか磨り剥いたのだが、驚いてとんで来た医者に、抱き取られながらも、いい気味だいい気味だ、死んだ弟を忘れてゐたから罰が当つたのだと、急にまた千万無量な思ひをするのであつた。