近所が火事であるための驚きと、心の感動と、言換れば偶然と必然とを、混同しない程度に比例して芸術非芸術があるとはシモンズの謂ふ所だ。
芸術は扨措いて、生活の中ででもそのやうな手合は困るのであつて、それらの人が朝目覚めた時の無念無想、即ち瞑想状態が、精神にも物質にも有益であつて、其処にこそ現実があり欣怡のあることに想到されるやう、私一介の馬鹿は希つてゐる。
作曲家は音域の拡大に、文人は語法の発明に、画家は偏へに方法的な今日、生活はその無味な装美にカラ躁ぎする今日、それもまあよいとして、感覚(受動)方面にばかり忙しく、魂(能動)方面が一向それに伴はない時、その人々が人生を無味だと云つたり懐疑を口にするとしても、慈愛は絶対に存して、蒼空は永遠に曇天よりも晴れやかであらう……