中原中也 『医者と赤ン坊』 疳高い甘え声が、真昼の暑熱が漸く鈍い渾然さをみせた夕刻の空気の中を、矢のやうに走つた。 そしてそれは彼の耳には格別によく響き入つた。 又、台所の方からは三十人に近い此の一家の夕飯仕度の煩雑な音が、これは人の胸を包むやうに彼の所に漂ひ寄つた。 中原中也の名言・名文を読む 用例を検索する → シェア