兄が湯から上つて来ると、耕二がボールをグラムに投げ込んではまたボールを手に取つて投げ込む――それを殆んど無意識に繰り返してゐるらしい音が、三畳の間でしてゐた。
兄が耕二の間の障子を開けると、「負けちやつた」と耕二はいきなりそれだけ言つた。
「他のことなら此方から訊いたつてロク/\答へない男が、自分の好きなことならあんなに訊かない先に答へるんだ」と兄は思つた。
兄が湯から上つて来ると、耕二がボールをグラムに投げ込んではまたボールを手に取つて投げ込む――それを殆んど無意識に繰り返してゐるらしい音が、三畳の間でしてゐた。
兄が耕二の間の障子を開けると、「負けちやつた」と耕二はいきなりそれだけ言つた。
「他のことなら此方から訊いたつてロク/\答へない男が、自分の好きなことならあんなに訊かない先に答へるんだ」と兄は思つた。