――それは私に変な癖があるのだが、一度私が矢張広島の頃、父が東京に出張するといつて出る時、私はそれまでは何でもなかつたが、父の俥がいよいよ玄関を出る時急に人生の大切な岐路にでも立たせられたやうな気がして来て、泣く泣く父の俥の後を二三町ばかり泣きながら夢中に追つ駆けたことがあつた。
父は汽車から私が脳病でも起しはすまいかと言つて端書を寄こした位だつた。
――恰度その時の感じが今も起こつて来た。
――それは私に変な癖があるのだが、一度私が矢張広島の頃、父が東京に出張するといつて出る時、私はそれまでは何でもなかつたが、父の俥がいよいよ玄関を出る時急に人生の大切な岐路にでも立たせられたやうな気がして来て、泣く泣く父の俥の後を二三町ばかり泣きながら夢中に追つ駆けたことがあつた。
父は汽車から私が脳病でも起しはすまいかと言つて端書を寄こした位だつた。
――恰度その時の感じが今も起こつて来た。