彼は夜の町を仰向勝ちにスタスタと歩きながら、「……あなただけに言ふんだから、誰にもスベらせちやあ嫌ですよ……」つてことばがヒツキリなしに頭を往来した。
此の頃彼は、町を歩いてる時など電車が通り過ぎるたびに、自分の指の血がついてるのをみようつてな気を出すのだ。
もう「御大事になさい……」といふ挨拶をされた晩から、三週間ばかりも経つてゐるが、そして指のキズは従兄のためにはもはやトツクに癒つて好い頃だが、いまだにS子の所に行く時、彼は繃帯をして行く……。
彼は夜の町を仰向勝ちにスタスタと歩きながら、「……あなただけに言ふんだから、誰にもスベらせちやあ嫌ですよ……」つてことばがヒツキリなしに頭を往来した。
此の頃彼は、町を歩いてる時など電車が通り過ぎるたびに、自分の指の血がついてるのをみようつてな気を出すのだ。
もう「御大事になさい……」といふ挨拶をされた晩から、三週間ばかりも経つてゐるが、そして指のキズは従兄のためにはもはやトツクに癒つて好い頃だが、いまだにS子の所に行く時、彼は繃帯をして行く……。