勿論これらのことは、僅かの紙数で以てさう軽々に云つて過ぎられることではない。
茲では只、茫漠たる焼野に建物が建つたためには、人知れぬ努力があつたのだし、ジイドのあの反省的で堅忍な調子を想起され度、芸術の容易でない時代に生れ、その時代を生きたのであることを云へばよいのである。
そして、その文体の、何だか息詰るやうなもの、出場のないといつた感じ――それはジイドの不名誉であり名誉であるのだが、それといふも実生活側がすつかり無気力であり、芸術家が却て実生活人の蓄積的実著さを要すとも云へる場合に、而も芸術自体は放散的過程を好むといふことから生ずる、二重性の故であることを注意しよう。