今の所猶概して印象の羅列以上のことを為し得てゐるとは思へませんが、あれらの努力が何時の日か一個完成したものに迄到達しないものではありますまい。
然し私にはそれが十年二十年で可能とは見えませんし、猶それが可能となるためにはもう一寸何かの要素が加はらなければならないのではないかと考へられます。
だが、あの精神の中には非常に明るい、非常に自在な世界があることは確かで、さういふ点では十分に影響されたいものと思つてゐますが、唯私にどうしても手放せない一つのことは、芸術作品には、一人の人間が生きてゐた、といふ感じの何ものかが、必ずやなくてはならないといふ事で、さもなければ読む方でつまらないばかりか、作る方で空虚なことでしかない筈だといふことであります。