別に面倒なことを避けようといふのではない、避けたいことはいつ何時だつて避けたいのだが、而も事に面前すれば、どうせ理想家の私のこと、どうせへとへとになるまでは打つ衝かることは知れたことだが、まあなんとしても、その時は額に重い力を感じた。
勿論、月曜日には飲み過ごしの後、銀座の酒場で、乱暴を致し、その翌日は心佗しく、独りでゐるに絶えられず、而もその銀座の酒場に一緒に行つた、津濃といふ友人の所へどうも行つてゐたく、勝手なこととは承知しながら、出掛けて行つて、ぐづぐづしてゐた。
その朝は、今日は絶対酒は飲むまいと心に誓つたものを、また夕飯には可なりの酒を出され、出されてみればもう嬉しくて、ついまた飲んだ火曜日の宵、それからそのあとまたほつついて、九時にまた別の友人宅を訪れ、その穏やかな友人の、諫めるやうな顔をみては、なんとか答へねば気が済まず、しどろもどろな弁解哲学を開講し、でも結局は詫びたい気持で其処を辞したが十時半、それからまたおでん屋の提灯をみては、ひよろ/\つと這入つたのが初まりで、財布も底をはたいてしまひ、おかげでその翌日は電車賃もなく、――といふ所へ舞ひ込んだ「相談したい事等ありますので」だから余計に重い力を額に、感たのである。