先生は既に叔母の娘の亭主になつてから一年余りになるが、結婚した頃、間もなく転任させられるらしかつたし、何処へ転任させられるかはハツキリしないので、荷物を運んでもまた直ぐ引越になるのは面倒だといふので、時々叔母とその娘の所に泊りに来ることにして転任を待つてるうちに一年経つてしまつたのであり、従つてその一年間に一度しか訪ねなかつた僕はその先生をつひぞ見掛けたことはないので、そのことが今やつと思ひ出せてみると、その先生の荷物だけが先に来てをり、先生は既にその家にゐて、火を起こしといて学校に出掛けたものであることも今漸く分るのだが、それにしても親戚のことといへば大概のことを記臆せず、今産院で生れた子供だつて男か女かも今朝何とか叔母が話してはゐたがもう忘れてしまつてゐる僕のことだから、どうぞ僕が今その先生の部屋を開けた時の驚きだつて、どうぞシラバツクレてゐるなんて思はないで下さい。
飛行機……ホオ、沢山あるな。
近くに野ッ原があるから、これからは大いに飛ばせて遊べるでありませう。