ホオ……と僕はお道化てゐるんだがまだ見ぬ先生に意地の悪い気持を抱いてゐるんだが、煙草をまづく感じ出すと、飛行機のみならず、洋服掛にまで、異常な好奇心を覚ゆるのであつた――とにかく御幸福なお方であらせられるよ。
叔母さん、叔母さんだつてさうなんだゾ。
郷里を出てより十三年、親戚といふのはテンキリ訪ねず、郷里を出た当坐訪ねて来た父の義父は玄関で追つ払ひ、学校に行かないので友達も出来ず、僕のやうに独りで暮して来た青年といふものは稀であらうが、その僕には信者の家を格安に借りるなぞといふことが、東京に出て一年やそこいらで出来る人種といふものが、如何に容易に世を渡つてゆくものであるかと、思はないではゐられない。