といつて何も茲でこんな私事を開陳に及びたいのではありませぬが、一寸掻い摘んで云つておかなければ、引越しの手伝ひをさせられるといふだけのことでプリプリしてゐると思はれる心配がある上に、今やつとお午近くになつて、漸く御到着の叔母と、これから荷物の片附けをするについて小生のとる態度が、甚だ横著に見えはしないかと心配があるからであります。
「君ちやん(僕の名、実は君介、どうもブラ公みたいな名ですよ)どうも遅くなつて御免よ、富田の奥さんがいろんな話をしなさるから、あとからあとから話しなさるから。
こつちはイライラするけれど、彼方は親切に何やかと訊ねなさるから、牧代(姉娘)はどうしたか、生れた子供は丈夫かと訊ねなさつて……」とニコニコしながら呼吸をつきながら、仰向き勝なその顔の、アザヤかな色の唇がさういふのである。