教会の附近の黄色い土塀つづきの、夕方はしづかり下りて来る彼処へ、ではまた落付いたな、あゝあゝと、僕は思ふのだつた。
なんだかミシンの音がして、炊煙がゆつくり棚引いて、鉄道の貨物配達車が、今日の最後の便を配達して廻つてゐる、そして夜が来ると十才ばかりの子供が「ゆんべの仇打の蚤取粉」と云つて蚤取粉を売つて歩く、広島の市のさういつた背景の前に、僕に暇乞ひに来た時の姿して、その時持つてゐた手提袋を持つて、仰向いて空をみてゐる叔母の様子が、程よい感傷を唆るのであつた。
その後、せめて木村夫婦の所を訪ねようといふ気もあるのだが、まだ訪ねない。