扨、話は前に戻る。
「あんよが出来出す一寸前頃は、一寸の油断もならないので、行李の蓋底におしめを沢山敷いて、その中に入れといたものだが、するとそのおしめを一枚々々、行李の外へ出して、それを全部出し終ると、今度はまたそれを一枚々々、行李の中へ入れたものだよ。
――さう云はれてみれば今でも自分のそんな癖はあつて、なにかそれは exchange といふことの面白さだと思ふのだが、それは今私も子供を持つて、やつと誕生を迎へたばかりのその子供が、硝子のこちらでバアといつて母親を見て、直ぐ次には硝子のあちら側からバアといつて笑ひ興ずる、そのことにも思ひ合されて自分には面白いことなのだが、それは何か化学的といふよりも物理的な気質の或物を現はしてはゐまいか。