刑死する己の姿なら想像してみることもできるし、武帝の気に逆らって李陵を褒め上げたときもまかりまちがえば死を賜うようなことになるかもしれぬくらいの懸念は自分にもあったのである。
ところが、刑罰も数ある中で、よりによって最も醜陋な宮刑にあおうとは!
迂闊といえば迂闊だが、(というのは、死刑を予期するくらいなら当然、他のあらゆる刑罰も予期しなければならないわけだから)彼は自分の運命の中に、不測の死が待受けているかもしれぬとは考えていたけれども、このような醜いものが突然現われようとは、全然、頭から考えもしなかったのである。