飢餓も寒苦も孤独の苦しみも、祖国の冷淡も、己の苦節がついに何人にも知られないだろうというほとんど確定的な事実も、この男にとって、平生の節義を改めなければならぬほどのやむを得ぬ事情ではないのだ。
蘇武の存在は彼にとって、崇高な訓誡でもあり、いらだたしい悪夢でもあった。
ときどき彼は人を遣わして蘇武の安否を問わせ、食品、牛羊、絨氈を贈った。
飢餓も寒苦も孤独の苦しみも、祖国の冷淡も、己の苦節がついに何人にも知られないだろうというほとんど確定的な事実も、この男にとって、平生の節義を改めなければならぬほどのやむを得ぬ事情ではないのだ。
蘇武の存在は彼にとって、崇高な訓誡でもあり、いらだたしい悪夢でもあった。
ときどき彼は人を遣わして蘇武の安否を問わせ、食品、牛羊、絨氈を贈った。