彼は粛然として懼れた。
今でも、己の過去をけっして非なりとは思わないけれども、なおここに蘇武という男があって、無理ではなかったはずの己の過去をも恥ずかしく思わせることを堂々とやってのけ、しかも、その跡が今や天下に顕彰されることになったという事実は、なんとしても李陵にはこたえた。
胸をかきむしられるような女々しい己の気持が羨望ではないかと、李陵は極度に惧れた。
彼は粛然として懼れた。
今でも、己の過去をけっして非なりとは思わないけれども、なおここに蘇武という男があって、無理ではなかったはずの己の過去をも恥ずかしく思わせることを堂々とやってのけ、しかも、その跡が今や天下に顕彰されることになったという事実は、なんとしても李陵にはこたえた。
胸をかきむしられるような女々しい己の気持が羨望ではないかと、李陵は極度に惧れた。