中島敦 『李陵』 目は庭前の槐樹の茂みに向かってしばらくはいたが、実は何ものをも見ていなかった。 うつろな耳で、それでも彼は庭のどこからか聞こえてくる一匹の蝉の声に耳をすましているようにみえた。 歓びがあるはずなのに気の抜けた漠然とした寂しさ、不安のほうが先に来た。 中島敦の名言・名文を読む 用例を検索する → シェア