行悩んで頬杖をついていた時、ひょいと、一人の惨めな男の生涯の幻影が頭の中を通り過ぎた。
その男は、ひどい肺病やみで、気ばかり強く、鼻持ならない自惚やで、気障な見栄坊で、才能もないくせに一ぱしの芸術家を気取り、弱い身体を酷使しては、スタイルばかりで内容の無い駄作を書きまくり、実生活に於ては、其の子供っぽい気取のため事毎に人々の嘲笑を買い、家庭の中では年上の妻のために絶えず圧迫を受け、結局は、南海の果で、泣き度い程北方の故郷を思いながら、惨めに死んで行く。
ちらりと一瞬、閃光のように斯うした男の一生の姿が浮かんだ。