南海の島から島へと渡り歩く白人行商人の中には、極く稀に(勿論、大部分は我利我利の奸譎な商人ばかりだが)次の二つの型の人間を見出すことがある。
その一つは、小金を溜めて、故郷へ帰り余生を安楽に暮らそうというような量見(之が普通の南洋行商人の目的だ)を全然持合せず、唯、南海の風光、生活、気候、航海を愛し、南海を離れたくないがためにのみ、今の商売を止めないといった様な人間。
第二は、南海と放浪とを愛する点では同様だが、之はずっと拗ねた烈しい行き方で、文明社会を故意に白眼視し、いわば、生きながら骨を南海の風雨に曝しているとでもいった虚無的な人間。