暴力への恐怖は動物的本能だとか、暴力の實際の無意義さとか、暴力行使者への輕蔑とか、そんな議論は此の際三文の値打もなく、私の身體は顫へ、私の心は只もう譯もなくベソをかいて了ふのである。
暴力の侵害(腕力ばかりでなく、思ひがけない野卑な惡意、誤解なども之に入れていい)に打克つだけの力を備へてゐるのは結構に違ひないが、相手に對抗し得る腕力・權力を有たないでゐて、(或ひは有つてゐても、それを用ひずに)唯精神的な力だけで悠揚と立派に對處し得る人があれば、尊敬しても宜いと思ふ。
それはどんな方法によるか、私には想像もつかない。