とりわけ、どのようなまことの愛情でも、それが他の極めて詰まらないものと同様に果敢なく消えて行くことに、彼は身を焼かれるような烈しい悲しさ寂しさを感じた。
――(更に何年か経って、今度は、反対に、どのような愚劣醜陋な事柄でも、崇高な事物と同様に、存在の権利を有ち、何らの醜い酬をも受けずに、美しいものと少しも変りなく、その存在を終えて行くことに、心の冷え行くようなむごたらしい感動を覚えたのだが。
(註2) 不思議なことに、小学生の頃の彼は、全体的な人類の滅亡などという考えにばかり紛れて、個人としての自分の死というものについては、それほど直接な惧れを感じなかった。