シャンゼリゼエ、ボア・ド・ブウロンニュ、モンマルトル、カルチェ・ラタン、……学校の裏山に寝ころんで空を流れる雲を見上げながら幾度僕はそれらの上に思いを馳せたことでしょう。
さて、それから春風秋雨、ここに十年の月日が流れました。
かつて抱いた希望の数々は顔の面皰と共に消え、昔は遠く名のみ聞いていたムウラン・ルウジュと同名の劇団が東京に出現した今日、横浜は南京町のアパアトでひとり佗しく、くすぶっている僕ですが、それでも、たまに港の方から流れてくる出帆の汽笛の音を聞く時などは、さすがに、その昔の、夢のような空想を思出して、懐旧の情に堪えないようなこともあるのです。