夏の土用に雪が降ったよりも、坑の中で安さんに説諭された方が、よほどの奇蹟のように思われた。
大晦日を越すとお正月が来るくらいは承知していたが、地獄で仏と云う諺も記憶していたが、窮まれば通ずという熟語も習った事があるが、困った時は誰か来て助けてくれそうなものだくらいに思って、芝居気を起しては困っていた事もたびたびあるが、――この時はまるで違う。
真から一万人を畜生と思い込んで、その畜生がまたことごとく自分の敵だと考え詰めた最強度の断案を、忘るべからざる痛忿の焔で、胸に焼きつけた折柄だから、なおさらこの安さんに驚かされた。