自分はここへ来る一週間前ある友達と約束をして、今から十日以内に阪地で落ち合おう、そうしていっしょに高野登りをやろう、もし時日が許すなら、伊勢から名古屋へ廻ろう、と取りきめた時、どっちも指定すべき場所をもたないので、自分はつい岡田の氏名と住所を自分の友達に告げたのである。
「じゃ大阪へ着き次第、そこへ電話をかければ君のいるかいないかは、すぐ分るんだね」と友達は別れるとき念を押した。
岡田が電話をもっているかどうか、そこは自分にもはなはだ危しかったので、もし電話がなかったら、電信でも郵便でも好いから、すぐ出してくれるように頼んでおいた。