と皆にたずねられて、キントトさんのしゃくり上げながら物語るのを聞けば、おおよそ次の如き事情であったという。
キントトさんは、まちで用事をすまして、帰りのバスを待合所で待っていたら、どしゃ降りの中を、アメリカの空のトラックが走って来て、そうしてどうやら故障を起したらしく、バスの待合所のちょうど前でとまり、運転台から子供のような若いアメリカ兵が二人飛び降り、雨に打たれながら修理にとりかかって、なかなか修理がすまぬ様子で、濡鼠の姿でいつまでも黙々と機械をいじくり、やがて、キントトさんたちのバスがやって来たが、キントトさんは待合所から走り出て、バスに乗りかけ、その時まるで夢中で、自分の風呂敷包の中の梨を一つずつそのアメリカの少年たちに与え、サンキュウという声を背後に聞いてバスの奥に駆け込んだとたんに発車。
それだけの事であったが、道場へ帰り着き、次第に落ちついて来ると共に、何とも言えずおそろしく、心配で心配でたまらなくなり、ついに夜、蒲団を頭からかぶってひとりでめそめそ泣き出すに到ったのだというのである。