いったいこの固パンという人物は、秘密主義というのか、もったい振っているというのか、僕たちをてんで相手にせず、いつまでも他人行儀で、はなはだ気づまりな存在であったが、おとといの夜、あのような嵐で、七時少し過ぎた頃から停電になって、そのために夜の摩擦も無かったし、また拡声機も停電のため休みになって、夜の報道も聞かれなかったから、塾生たちは、みんな早寝という事になったのである。
けれども、風の音がひどいので、誰も眠られず、かっぽれは小声で歌をうたうし、越後獅子は、自分のベッドの引出しから蝋燭を捜し出して、それに点火して枕元に立て、ベッドの上に大あぐらをかいて自分のスリッパの修繕に一生懸命である。
「ひどい風ですね。