そうして、或る眠られぬ一夜、自分の十五年間の都会生活に就いて考え、この際もういちど、私の回想記を書いてみようかと思い立った。
もういちど、というわけは、五年くらい前に、私は「東京八景」という題で私のそれまでの東京生活をいつわらずに書いて発表した事があるからである。
しかし、それから五年経ち、大戦の辛苦を嘗めるに及んで、あの「東京八景」だけでは、何か足りないような気がして、こんどは一つ方向をかえ、私がこれまで東京に於いて発表して来た作品を主軸にして、私という津軽の土百姓の血統の男が、どんな都会生活をして来たかを書きしたため、また「東京八景」以後の大戦の生活をも補足し、そうして、私の田舎臭い本質を窮めたいと思った。