人を、畏敬してばかりいる。
人が、僕にかたちばかりのお辞儀をしても、僕は、そのお辞儀を、まごころからのものだと思い込んで、たちまち有頂天、発狂気味にさえなって、その人の御期待にお報いせずんばあるべからずと、心にも無い英雄の身振りを示し、取りかえしのつかぬ事になったりして、みんなに嘲笑せられるくらいが落ちさ。
人に悪口を言われても、その人の敵意には気が附かず、みんな僕の為を思って、言いにくい悪口でも無理に言ってくれるのだ、ありがたい、この御厚情には、いつの日かお報いせずんばあるべからずと、心の中の手帳にその人の名を恩人として明記して置くという始末なのだ。