野中先生のおっしゃるには、この世の中にいかにおびただしく裏切りが行われているか、おそらくは想像を絶するものだ、いかに近い肉親でも友人でも、かげでは必ず裏切って悪口や何かを言っているものだ、人間がもし自分の周囲に絶えず行われている自分に対する裏切りの実相を一つ残らず全部知ったならば、その人間は発狂するだろう、という事でした。
しかし僕はそれに反対して、人間は現実よりも、その現実にからまる空想のために悩まされているものだ。
空想は限りなくひろがるけれども、しかし、現実は案外たやすく処理できる小さい問題に過ぎないのだ。