屋台の裏にも山桜の大木三本有之、微風吹き来る度毎に、おびただしく花びらこぼれ飛び散り、落花繽紛として屋台の内部にまで吹き込み、意気さかんの弓術修行者は酔わじと欲するもかなわぬ風情、御賢察のほど願上候。
然るに、ここに突如として、いまわしき邪魔者の現れ申候。
これ老生の近辺に住む老画伯にして、三十年続けて官展に油画を搬入し、三十年続けて落選し、しかもその官展に反旗をひるがえす程の意気もなく、鞠躬如として審査の諸先生に松蕈などを贈るとかの噂も有之、その甲斐もなく三十年連続の落選という何の取りどころも無き奇態の人物に御座候えども、父祖伝来のかなりの財産を後生大事に守り居る様子にて、しかしながら人間の価値その財産に依って決定せらるべきものならば老生は只今、割腹し果申すべし、杉田老画伯の如きは孫の数人もありながら赤き襟飾など致して、へんに風態を若々しく装い、以て老生を常日頃より牽制せんとする意図極めてあらわに見え申候。