ありがとうございます、という老生の声は、獣の呻き声にも似て憂愁やるかた無く、あの入歯を失わば、われはまた二箇月間、歯医者に通い、その間、一物も噛む事かなわず、わずかにお粥をすすって生きのび、またわが面貌も歯の無き時はいたく面変りてさらに二十年も老け込み、笑顔の醜怪なる事無類なり、ああ、明日よりの我が人生は地獄の如し、と泣くにも泣けぬせつない気持になり申候いき。
杉田老画伯は心利きたる人なれば、やがて屋台店より一本の小さき箒を借り来り、尚も間断なく散り乱れ積る花びらを、この辺ですか、この辺ですか、と言いつつさっさっと左右に掃きわけ、突如、あ!
ありましたあ!