まことにこの利休居士、豊太閤に仕えてはじめて草畧の茶を開き、この時よりして茶道大いに本朝に行われ、名門豪戸競うて之を玩味し給うとは雖も、その趣旨たるや、みだりに重宝珍器を羅列して豪奢を誇るの顰に傚わず、閑雅の草庵に席を設けて巧みに新古精粗の器物を交置し、淳朴を旨とし清潔を貴び能く礼譲の道を修め、主客応酬の式頗る簡易にしてしかもなお雅致を存し、富貴も驕奢に流れず貧賤も鄙陋に陥らず、おのおの其分に応じて楽しみを尽すを以て極意となすが如きものなれば、この聖戦下に於いても最適の趣味ならんかと思量致し、近来いささかこの道に就きて修練仕り申候ところ、卒然としてその奥義を察知するにいたり、このよろこびをわれ一人の胸底に秘するも益なく惜しき事に御座候えば、明後日午後二時を期して老生日頃昵懇の若き朋友二、三人を招待仕り、ささやかなる茶会を開催致したく、貴殿も万障繰合せ御出席然るべく無理にもおすすめ申上候。
流水濁らず、奔湍腐らず、御心境日々に新たなる事こそ、貴殿の如き芸術家志望の者には望ましく被存候。
茶会御出席に依り御心魂の新粧をも期し得べく、決してむだの事には無之、まずは欣然御応諾当然と心得申者に御座候。