いよいよ茶会の当日には、まず会主のお宅の玄関に於いて客たちが勢揃いして席順などを定めるのであるが、つねに静粛を旨とし、大声で雑談をはじめたり、または傍若無人の馬鹿笑いなどするのは、もっての他の事なのである。
それから主人の迎附けがあって、その案内に従い茶席におそるおそる躙り入るのであるが、入席したらまず第一に、釜の前に至り炉ならびに釜をつくづくと拝見して歎息をもらし、それから床の間の前に膝行して、床の掛軸を見上げ見下し、さらに大きく溜息をついて、さても見事、とわざとらしくないように小声で言うのである。
ふりかえって主人に掛軸の因縁などを、にやにや笑ったりせず、仔細らしい顔をして尋ねると、主人はさらに大いに喜ぶのである。