作家たるもの、またこの現象を黙視し得ず、作品は二の次、もっぱらおのれの書簡集作成にいそがしく、十年来の親友に送る書簡にも、袴をつけ扇子を持って、一字一句、活字になったときの字づらの効果を考慮し、他人が覘いて読んでも判るよう文章にいちいち要らざる註釈を書き加えて、そのわずらわしさ、ために作品らしき作品一つも書けず、いたずらに手紙上手の名のみ高い、そういうひとさえ出て来るわけではないか。
書簡集に用いるお金があったなら、作品集をいよいよ立派に装釘するがいい。
発表されると予期しているような、また予期していないような、あやふやな書簡、及び日記。