丸亀屋の親爺は、かねてよりわが子の才兵衛の力自慢をにがにがしく思い、何とか言おうとしても、才兵衛にぎょろりと睨まれると、わが子ながらも気味悪く、あの馬鹿力で手向いされたら親の威光も何もあったものでない、この老いの細い骨は木っ葉微塵、と震え上って分別し直し、しばらく静観と自重していたのだが、このごろは角力に凝って他人様を怪我させて片輪にして、にくしみの的になっている有様を見るに見かねて、或る日、おっかなびっくり、
「才兵衛さんや、」わが子にさんを附けて猫撫声で呼び、「人は神代から着物を着ていたのですよ。
遠慮しすぎて自分でも何だかわからないような事を言ってしまった。