そのさかなが現われる時には、海の底が雷のように鳴って風もねえのに大波が起って、鯨なんてやつも東西に逃げ走って、漁の船も、やあれ、おきなが来たぞう、と叫び合って早々に浜に漕ぎ戻り、やがて、おきなが海の上に浮んで、そのさまは、大きな島がにわかに沖にいくつも出来たみたいで、これは、おきなの背中や鰭が少しずつ見えたのでして、全体の大きさは、とてもとても、そんなもんじゃありやしねえ。
はかり知る事が出来ねえのだ。
このおきなは、小さなさかなには見むきもしねえで、もっぱら鯨ばかりたべて生きているのだそうでして、二十尋三十尋の鯨をたばにして呑み込んで、その有様は、鯨が鰯を呑むみたいだってんだから凄いじゃねえか。