裸川
鎌倉山の秋の夕ぐれをいそぎ、青砥左衛門尉藤綱、駒をあゆませて滑川を渡り、川の真中に於いて、いささか用の事ありて腰の火打袋を取出し、袋の口をあけた途端に袋の中の銭十文ばかり、ちゃぼりと川浪にこぼれ落ちた。
青砥、はっと顔色を変え、駒をとどめて猫背になり、川底までも射透さんと稲妻の如く眼を光らせて川の面を凝視したが、潺湲たる清流は夕陽を受けて照りかがやき、瞬時も休むことなく動き騒ぎ躍り、とても川底まで見透す事は出来なかった。
裸川
鎌倉山の秋の夕ぐれをいそぎ、青砥左衛門尉藤綱、駒をあゆませて滑川を渡り、川の真中に於いて、いささか用の事ありて腰の火打袋を取出し、袋の口をあけた途端に袋の中の銭十文ばかり、ちゃぼりと川浪にこぼれ落ちた。
青砥、はっと顔色を変え、駒をとどめて猫背になり、川底までも射透さんと稲妻の如く眼を光らせて川の面を凝視したが、潺湲たる清流は夕陽を受けて照りかがやき、瞬時も休むことなく動き騒ぎ躍り、とても川底まで見透す事は出来なかった。