この時、人足の中に浅田小五郎という三十四、五歳のばくち打がいた。
人間、三十四、五の頃は最も自惚れの強いものだそうであるが、それでなくともこの浅田は、氏育ち少しくまされるを鼻にかけ、いまは落ちぶれて人足仲間にはいっていても、傲岸不遜にして長上をあなどり、仕事をなまけ、いささかの奇智を弄して悪銭を得ては、若年の者どもに酒をふるまい、兄貴は気前がよいと言われて、そうでもないが、と答えてまんざらでもないような大馬鹿者のひとりであった。
かれはこの時、人足たちと共に片手に松明を持ち片手で川底をさぐっているような恰好だけはしていたが、もとより本気に捜すつもりはない。