と面を剛くして言い切れば、勝太郎さすがは武士の子、あ、と答えて少しもためらうところなく、立つ川浪に身を躍らせて相果てた。
式部うつむき涙を流し、まことに武家の義理ほどかなしき物はなし、ふるさとを出でし時、人も多きに我を択びて頼むとの一言、そのままに捨てがたく、万事に劣れる子ながらも大事に目をかけここまで来て不慮の災難、丹後どのに顔向けなりがたく、何の罪とがも無き勝太郎をむざむざ目前に於いて死なせたる苦しさ、さりとては、うらめしの世、丹後どのには他の男の子ふたりあれば、歎きのうちにもまぎれる事もありなんに、それがしには勝太郎ひとり。
国元の母のなげきもいかばかり、われも寄る年波、勝太郎を死なせていまは何か願いの楽しみ無し、出家、と観念して、表面は何気なく若殿に仕えて、首尾よく蝦夷見物の大役を果し、その後、城主にお暇を乞い、老妻と共に出家して播州の清水の山深くかくれたのを、丹後その経緯を聞き伝えて志に感じ、これもにわかにお暇を乞い請け、妻子とも四人いまさらこの世に生きて居られず、みな出家して勝太郎の菩提をとむらったとは、いつの世も武家の義理ほど、あわれにして美しきは無しと。