ところで、この中の一組、太鼓をかついで杉林にさしかかった頃から女房が悪鬼に憑かれたように物狂わしく騒ぎ立て、亭主の過去のふしだらを一つ一つ挙げてののしり、亭主が如何になだめても静まらず、いよいよ大声で喚き散らすゆえ、亭主は困却し果て、杉林を抜けて畑にさしかかった頃、あたりをはばかる小さい声で、騒ぐな、うらむな、太鼓の難儀もいましばしの辛抱、百両の金は、わしたちのもの、家へ帰ってから戸棚の引出しをあけて見ろ、と不思議な事を言った。
言った者には、覚えのある筈。
いや、それがしは神通力も何も持っていない。