白状のしついでに私の出家遁世の動機をも、いまは包まず申し上げますが、私はあなた様たちのお仲間にいれてもらって一緒にお茶屋などに遊びにまいりましても、ついに一度も、もてた事はなく、そのくせ遊びは好きで、あなた様たちの楽しそうな様子を見るにつけても、よし今夜こそはと店の金をごまかし血の出るような無理算段して、私のほうからあなた様たちをお誘い申し、そうしてやっぱり、私だけもてず、お勘定はいつも私が払い、その面白くない事、或る夜やぶれかぶれになって、女に向い、「男は女にふられるくらいでなくちゃ駄目なものだ」と言ったら、その女は素直に首肯き、「本当に、そのお心掛けが大事ですわね」と真面目に感心したような口調で申しますので、立つ瀬が無く、「無礼者!
と大喝して女を力まかせに殴り、諸行無常を観じ、出家にならねばならぬと覚悟を極めた次第で、今日つらつら考えると私のような野暮で物欲しげで理窟っぽい男は、若い茶屋女に好かれる筈はなく、親爺のすすめる田舎女でも、おとなしくもらって置けばよかったとひとりで苦笑致して居ります。
まことに山中のひとり暮しは、不自由とも何とも話にならぬもので、ごはんの煮たきは気持ちもまぎれて、まだ我慢も出来ますが、下着の破れを大あぐら掻いて繕い、また井戸端にしゃがんでふんどしの洗濯などは、御不浄の仕末以上にもの悲しく、殊勝らしくお経をあげてみても、このお経というものも、聞いている人がいないとさっぱり張合いの無いもので、すぐ馬鹿らしくなって、ひとりで噴き出したりして、やめてしまいます。