と大喝して女を力まかせに殴り、諸行無常を観じ、出家にならねばならぬと覚悟を極めた次第で、今日つらつら考えると私のような野暮で物欲しげで理窟っぽい男は、若い茶屋女に好かれる筈はなく、親爺のすすめる田舎女でも、おとなしくもらって置けばよかったとひとりで苦笑致して居ります。
まことに山中のひとり暮しは、不自由とも何とも話にならぬもので、ごはんの煮たきは気持ちもまぎれて、まだ我慢も出来ますが、下着の破れを大あぐら掻いて繕い、また井戸端にしゃがんでふんどしの洗濯などは、御不浄の仕末以上にもの悲しく、殊勝らしくお経をあげてみても、このお経というものも、聞いている人がいないとさっぱり張合いの無いもので、すぐ馬鹿らしくなって、ひとりで噴き出したりして、やめてしまいます。
立ち上って吉野山の冬景色を見渡しても、都の人たちが、花と見るまで雪ぞ降りけるだの、春に知られぬ花ぞ咲きけるだの、いい気持ちで歌っているのとは事違い、雪はやっぱり雪、ただ寒いばかりで、あの嘘つきの歌人めが、とむらむら腹が立って来ます。