馬鹿になさらず、どうかどうかお見捨てなく、いつまでもお附き合いを願います。
たまにはお手紙も下さいよ。
あんなに皆に遊びに来いと書き送ってやったのだから、誰かひとり、ひょっとしたらお見えになるかも知れぬ、と毎日毎日むなしく待ちこがれ、落葉が風に吹かれて地を這う音を、都の人の足音かと飛立って外に駈け出し、蕭条たる冬木立を眺めて溜息をつき、夜は早く寝て風が雨戸をゆり動かすのを、もしや家から親御さまのお迎えかなど、らちも無い空頼みしていそいで雨戸をあけると寒月皎々と中空に懸り、わが身ひとつはもとの身にして、南無阿弥陀と心底からの御念仏を申し、掛蒲団を裏返しにして掛けて寝ると恋しい女の面影を夢に見ると言伝えられているようですから、こんな淋しい夜にこそ、と思うのですが、さて、私にはこれぞと定った恋人も無く、誰でもいいとはいうものの、さあ、誰の面影が出るか、など考えて、実に馬鹿らしくなり、深夜暗闇の中でひとりくすくす笑ってしまいました。