この疾風怒濤の如き接待は、津軽人の愛情の表現なのである。
干鱈といふのは、大きい鱈を吹雪にさらして凍らせて干したもので、芭蕉翁などのよろこびさうな軽い閑雅な味のものであるが、Sさんの家の縁側には、それが五、六本つるされてあつて、Sさんは、よろよろと立ち上り、それを二、三本ひつたくつて、滅多矢鱈に鉄槌で乱打し、左の親指を負傷して、それから、ころんで、這ふやうにして皆にリンゴ酒を注いで廻り、頭の鉢の一件も、決してSさんは私をからかふつもりで言つたのではなく、また、ユウモアのつもりで言つたのでもなかつたのだといふ事が私にはつきりわかつて来た。
Sさんは、鉢のひらいた頭といふものを、真剣に尊敬してゐるらしいのである。