さうしてSさんの如く、実質に於いては、到れりつくせりの心づかひをして、さうして何やらかやら、家中のもの一切合切持ち出して饗応しても、ただ、お客に閉口させるだけの結果になつて、かへつて後でそのお客に自分の非礼をお詫びしなければならぬなどといふ事になるのである。
ちぎつては投げ、むしつては投げ、取つて投げ、果ては自分の命までも、といふ愛情の表現は、関東、関西の人たちにはかへつて無礼な暴力的なもののやうに思はれ、つひには敬遠といふ事になるのではあるまいか、と私はSさんに依つて私自身の宿命を知らされたやうな気がして、帰る途々、Sさんがなつかしく気の毒でならなかつた。
津軽人の愛情の表現は、少し水で薄めて服用しなければ、他国の人には無理なところがあるかも知れない。